離婚は簡単？
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【第八十一話】
前回までの恋の鉄人285は。。。） 新たに声を掛けたのは、いかにも可愛らしい女の子っぽい雰囲気の女性N南さんでした。彼氏はいるけれど、最近うまくいっていないとのことで、とりあえず嫌なことは話して忘れようと2人で盛り上がっていました。そんな中、N南さんは彼氏とのことにケジメをつけるために話し合ってくると言います。
N南さんとの出会いからがちょうどひと月ほどした日、彼女のリクエストでスカイプで話すことになったのですが、そんな彼女の口から「実は恋鉄くんに謝らないといけないことが・・・」というセリフが。まさに以前別れたN南さんが彼氏との同棲を私に告白する時に言ったセリフとまんま同じ。私の背中に一気に緊張が走ります。
「ん？何？元サヤになったっこと？それとも・・・あ、もしかして結婚してたとか？」と冗談めいて言ってみたのですが、「そう」と返すN南さん。え？この“そう”は何に対しての“そう”？頭がパニックになってあらためて聞いてみると、実は彼女、結婚していたのだそう。彼氏と表現していたのは旦那さんのことだったということです。え？でも結婚までしているのになぜそんなに揉めているのでしょう？
N2さんが私に6年の付き合いをしている彼氏がいると説明していたのは、4年の交際を経て、2年の結婚生活を送っているということだったようです。その2年のうちに倦怠期を迎えてしまったというわけなんだそうですが、ただ聞いていると、N南さんの方には未練がないのですが、旦那さんにはまだ気持ちが残っているような感じです。
「キミに好きな人が現れるまではせめていっしょにいよう」と言われているとのことですので。強引にN南さんが別れることを前提に話を進めているようで「“いっしょに住んでいても、新しい交際相手を見つけるのは問題ないし、それでもいい”と旦那が言ったのだから、その内容で誓約書も交わす」というようなことまで言ってのけます。
ひょんなことからN南さんに出会ったものの、私が20代半ばの彼女の交際相手となるにはちょっと年が離れすぎて現実的でないし、とりあえず必要とされたら出ていくことにして、しばらくは彼女を見守ることにしました。
この時点で私とN南さんはLINEでもつながり、細かい連絡をもらっていました。そして2人の話し合いからさらにことは進展しているようで、旦那さんが離婚届を取って来たそうです。その離婚届にサインをし、自分のお母さんに署名をしてもらいたいと彼女は実家に赴いたようですが、次の日には実家から旦那さんと住む今の家に戻っていたようです。結果的にお母さんには離婚届の署名はしてもらえなかったそうです。そりゃあそうだと思います。ほぼ娘のわがままで一方的に進めていることを、簡単に了承するわけにもいかないのでしょう。まぁでも離婚ってそんな簡単なものでないのは私が一番よくわかっていますから。
また後日、N南さんから旦那さんと離れて暮らすことを決めたとの連絡が入っていました。とりあえずは今住んでいるところから離れてしばらく実家に戻るようです。そこから一人暮らしを検討するとのことで、順序としては正攻法だと思います。元々は都心に近いところに住んでられたので、実家はちょっと都心から離れてしまい「気軽に顔を合わせるのも難しくなるね〜」などと話していて「じゃあ引っ越す前に一度食事でもしよう」とN南さんは約束をしてくれました。これだけ仲良くなっていた私たちですが、まだ実際には顔を合わせたことがなかったのです。
そしてようやく訪れたN2さんとの初顔合わせの日です。彼女の観たい映画がやっているのでそれを観るのが主な目的ですが、今日は久しぶりのデートにいつになく緊張している私です。
いつもなら女性より早く到着する私ですが、N南さんはそれ以上に早く到着していると連絡を受けていて、足早に待ち合わせ場所に向かいます。それらしい人が見当たらないので電話を入れると「あ！」とお互い手をあげて電話を切ります。既婚者の風格というものでしょうか、近づいてくる彼女は意外にも背が高く、画面で見る以上に大人びて見えました。
昼食をステーキにしようと入った店ですが、週末は焼肉だけと言われ、初めての食事に焼肉というのもどうかと思って「においとか大丈夫？」と言うと「別にいいよ」と彼女。座敷状の個室に通されて、オーダーした肉が運び込まれたタイミングで「今年は旦那さんから誕生日プレゼントがまだと聞いてたんで」と彼女がほしがっていた国内ブランドのネックレスを差し出しました。N南さんは箱から取り出して「かわいい～♪ありがとう」と感嘆の声をあげていました。これをきっかけに、少し緊張が解けて、会話も弾み、食事もすすみました。
今日のメインである映画を観に映画館へ向かう最中に、私がお金を挟んでいたマネークリップや映画の半券を紛失するという失態を犯します。動揺している私を尻目に、彼女が途中で買い物をした時に持っていた大きめの袋の中から「これ？」とマネークリップや映画の半券を取り出してくれました「え〜？なんでここに入ったんやろ？」。まぁよくよく考えるとここに来るまでに重たげなその袋を私が代わりに持っていたタイミングがあって、その時にたまたまそこへ落としてしまったようです。う〜ん、モノが手につかないなんて、緊張がまだ残っているのでしょうか。
映画を観終わった頃、時間はそろそろ夕方。今日は一日時間を空けてくれているとのことで、そのまま夕食に向かいます。実はN南さんも飲める方ではなく、２人とも軽いカクテルを１杯ずつ、サラダ、ピザ、パスタと比較的軽いものをオーダー。それらをツマミに、ここではいっそう個人レベルの突っ込んだ話を展開し、私の別れた理由、N南さんと旦那さんとの出会いなどについてを話していました。そんな話の中でN2さんは「せっかく自由になれたのなら、少しいろんな人と出会って視野を広めたい」とも言っていました。たしかに、今近くにいるからと私だけに留まるような必要もないですからね。
そうこうしているうちにお別れの時間。改札で彼女を握手で見送り、私とN南さんの初めてのデートは終了しました。帰りの電車では、彼女から「ネックレスのサプライズも、今日１日も楽しかった」と感謝の言葉が連なって送られてきていました。
【第八十二話】に続きます・・・。
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