共依存
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【第百七十八話】
前回までの恋の鉄人285は。。。） 『ライブチャット』で出会ったＭ奈さん。いろいろと精神的に問題を抱えている彼女には、まずは生活習慣の変化が必要だと考えます。意外にも何に対しても前向きに取り組む気持ちだけはあるようですので、まずは運動を習慣化しようと、彼女といっしょに運動できるような場所を探しました。
私が地元でやっている運動をこちらでもできる場所があるかを確認しに歩いたところ、それなりの場所は見つけることができました。大きな川の側面には遊歩道が施してあり、そこにはウォーカーやランナーたちが少なからず運動している状況です。少し広い場所を確保すれば筋トレも可能そうです。ただ、日陰になる場所がないので、夏の暑い日が来れば、さらにまた足を延ばした先の公園での活動も視野に入れています。
今日はとりあえず下見ということで、それでも結構な距離を歩いてきて、引きこもりがちな彼女にとってはいい運動になったようで、帰ってきて早々ベッドに寝転がっています。私は彼女のパソコンを借りて、ネットでスポーツウエアを注文しようと思います。カッコつける必要もないので、とりあえずは廉価なＧＵのサイトをチェック。まずは彼女。上はありもののＴシャツでも構わないので、ランニング用の半パン、着圧のレギンス、シューズ。私用はある程度、家から持ってくるとして、やはりレギンスとシューズくらいですね。自分の名義で送り先だけを彼女の住所にして購入。これで来週からは日曜日も運動をすることができます。なんてことをしていると、疲れた彼女がベッドでスヤスヤ寝入ってしまっています。出ていく前に朝ごはんをとったところなので、夕方まで食事はしなくても大丈夫そうです。彼女の昼寝の間は私の「プリズンブレイク」タイムです。
数時間経った頃、寝ていた彼女が目を覚ましました。そう言えば、そろそろ夕飯の買い物に出てもいい時間かもしれません。「あ、疲れたあとは甘いもんやな」とキッチンに置いてあった彼女からもらった高級チョコを持ってきて、彼女と口にしました。外国産でもさすが高級なだけあって無駄な甘味はありません。１枚以上食べるのが惜しいので「また次回」と言ってキッチンに戻しておきました。
さて、自転車を出してまた夕食の買い出しです。「今日は何しようかね」とまるで主婦のように悩みます。彼女に栄養を摂ってもらわなきゃならないし、残っても彼女が次の日も食べられるもの…「あ、カレーか！」と思いつきました。ただ、出汁から、固形ルーからというのはさすがに面倒なので、ルーはレトルトを使い、入れる具材をきちんと煮込んで食べることにしました。肉、野菜、念のためシーフードミックスと購入。相変わらず彼女はワインをカゴに入れ、私はアイスとツマミを入れます。そして最後に「アイコスを買っていい？」とねだられてスーパーをあとにします。
彼女のポストを見ると長いこと確認もしていない感じです。不要な広告を棄てて、封書など、必要そうなものだけをピックアップ。部屋に帰って見ると、公共料金の支払いの用紙のほか、支払いが遅延しているので早く払ってくれというような内容のようです。詳細を見ても、さほどの金額ではないのですが、どうもあと払いのシステムを活用しては払わないまま放っておくのでこういった督促状のような形で届いているようです。これはあまりよくない状況だということはすぐに理解できます。彼女には「ポストはきちんと毎日見て、必要な書類は分けておくようにしぃや」と諭し、この時はまだ何も言わずに置いておきました。
夕飯の支度まではまだもう少し時間がありそうなので彼女と２人、まったりと時間を過ごします。「お母さんとはどんなタイミングで会うの？」と聞くと「いつもいっしょにパチンコに行く」のだとか。お母さんがどのような生活状況なのかまでは知らない方がいいだろうと突っ込んで聞くことはしませんでしたが、ネグレクトを受けた本人であるにも関わらず、憎むこともなく関係を続けていられることが、通常なら考えられないと思うのですが。これがいわゆる「共依存」ということなのでしょう。この場合は、母親が娘に対して依存をしているということ。一方、娘も、依存されることで自分の存在意義を見出しているところがあるわけです。ひとつ間違えると、私も彼女と共依存の関係になりかねません。私が何もかも世話をしてしまうことで彼女の自立を妨げてしまう結果となるのです。
もちろん彼女は意識的に依存しようとして私を巻き込んだわけではなく、純粋に恋愛感情を抱いてこうなっただけのことだと思います。しかし、私がコントロールできなくなったら共倒れという結果を招く恐れもあるのです。家族のことはさておき、まずはやはり彼女の生活習慣の改善が急務なようです。
ひっついて離れない彼女が「今日、帰るの？」と言うので「会社の持ち物持ってきてないしな」と答えると「絶対にいるものなん？」と念を押してきます。まぁ正直、絶対にいるものは今日も持っているわけで、いわゆるビジネス手帳やら名刺やら、打ち合わせ時に必要なものがカバンに一式入っているのでどうしてもってわけではないのですが。「この格好は完全にプライベート仕様やからなぁ」とさらに言うと「だいじょうぶ」と根拠のない返事を返してきます(笑)。私の中でも葛藤があって、もちろん大阪市内のここから会社に行く方が絶対的に楽なんです。時間も半分くらいで済むはずです。そして彼女の悪魔の囁きに負けて「わかった。ほな、明日はこっから出勤する」と言うと、喜んで抱きついてきます。人間、ラクを覚えたらダメになりますね(笑)。
【第百七十九話】に続きます・・・。
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